優秀賞選評
「投資を始めてみたいけど、本当に何も全くわからない」という「初心者以下のど素人」に最初に読んでいただきたい、基礎の基礎だけを解説した本です。
著者のEdit room:Hさんは、以前は出版社で編集者として勤務していましたが、現在は独立して、個人でライティングや編集を請け負う仕事をされています。そのため、クライアントにご自身のライティングや編集の力量を理解してもらうための見本書籍として、この本を作られたそうです。
出版のきっかけこそご自身の仕事につなげるためのサンプルとのことですが、多くの人が知りたいであろう資産運用を題材として選び、対談形式でわかりやすく、親しみやすいイラスト、そして巧みなレイアウトなど、商業出版で出せるほどの高いレベルでまとめあげられています。
さらに、手頃なサイズ感やページ数、適切な価格、電子版との並行販売などもあいまって、1000件を超えるAmazonカスタマーレビューや、発売から2年近くたった現在でもコンスタントな売れ行きを獲得していることが高く評価されました。
グランプリ選評
「人物イラスト以外の作業は全て自分で行いました。ライティングだけでなく、本来は自分の専門ではない図版の作成、DTPなども行ったので素人くさいところもありますが、あえて外注はせずに、自分のできる範囲で作りました。」と著者。
PODを使った個人出版にチャレンジされ、商業出版に匹敵するレベルの本をほぼ一人で作り上げました。そもそもの出版目的こそ、ご自身の仕事の力量をクライアントに理解してもらうための見本書籍だったとのことですが、そのような目的でPOD出版を活用されること自体、新しい世代の登場という気がします。
実はこの本、電子書籍版も半額以下の価格で販売されているにも関わらず、紙の本(POD版)だけで1万1千冊以上を売り上げています。さらに発売から2年近く経ったいまでも、ひと月あたりの販売実績が伸び続けているというのも驚異的で、商業出版でもなかなか見られることではありません。
本の企画自体は商業出版でも数多く出版されているジャンルなだけに、ユニークな出版活動を評価の軸に据えているネクパブPODアワードのグランプリに本当に相応しいか、という議論も一旦はなされました。
しかし、タイムリーに売れ筋のものをしっかりした内容で作れば、PODの個人出版でもここまで売ることができる、という圧倒的な実績を前に、審査員全員による高い評価が揺らぐことはありませんでした。
20年後に今の時代を振り返ってみた時に、「プロの出版社と個人出版を隔てる壁が低くなっていったのは、あの頃がターニングポイントだったね」と思わせられるかもしれない、そんな時代を象徴する受賞だと思います。
ドイツに長年住む森林の専門家である著者の池田さんによる、四半世紀の間に学び、働き、生活する中で得られた幅広い知見が、人と森との関係を軸にまとめられた一冊です。
この本は、Amazonのカスタマーレビューでも「まさにSDGsそのもの」「SDGsの本質を学べる本」などと高い評価を受けています。実際に日本ではSDGsという言葉がバズワードにもなっていますが、著者が拠点にしているドイツではサステナビリティ(持続可能性)の語源を持つ国であるにもかかわらず、SDGsを知らない人も多く、池田さん自身もそれを意識して執筆したわけではないとのことです。
ご自身によるドイツでの長年の体験や経験から培われた本物の「知」と、「サステナビリティ」という時代が求めるテーマ。そのふたつが高度に結びついた内容になっている本書には、SDGsブームにのって急ごしらえで作られたようなコンテンツとは一線を画す「本物」感があります。そしてその結果として、日本では「まさにSDGsそのもの」として多くの人に受け入れられることとなりました。それらのことが今回高く評価されました。
2020年の緊急事態宣言をきっかけに、「コロナ禍であっても、人と繋がることを諦めたくない」そんな気持ちに共感した人たちが集まったオンラインイベントが全3回で開催されました。この本は、参加者2,000人を集めたそのイベントの世界を味わうことができる公式ガイドブックです。
本を開くと、雑誌やムックのような体裁のきれいなレイアウトや写真が目を引きます。本づくりのプロではない人たちの集まりでも、レイアウトのテンプレートを用意することができれば、原稿や写真を持ち寄り、当てはめていくことで、ここまでの本を作ることができる。比較的効率よい形で、高品質な雑誌やムックを個人出版で実現できる。その見本となるような一冊になっています。
昨今、紙の雑誌を取り巻く状況は厳しく、電子版に移行することも珍しくありません。そのような中、PODならばこんなこともできる という雑誌の一つの生き残りの形を示していること、この時代だからこそ始まった企画というユニークさ、初めて出会った人たちまでも巻き込んでのチームパブリッシングを実現させたという点で高く評価されました。
健康と長寿を求める欧米の人たちに向けて、日本の伝統文化を基にした食事法と健康法を英語で紹介した本です。同様のテーマで日本語版も出版されていますが、今回は英語版の方でご応募いただきました。
ネクパブをご利用いただいてのAmazon PODでは、海外6か国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)での出版が可能で、それはPODが従来の出版方法と比較して非常に優れた点でもありますが、海外出版にチャレンジされている方はまだ一握りです。
著者のTakamiyaさんは、この本に書かれている内容を、何が何でも世界中の人たちに伝えたいという一心で、母国語ではない英語で苦心しながら執筆し、ブログ、SNS、YouTubeなどを活用した販促活動も行っています。
個人でワールドワイドな出版にチャレンジし、それが売上という形も含めて一定の成功を得られていること。本文に図や写真がないことはいささか寂しく思えますが、それを補って余りあるチャレンジであることが高く評価されました。
2019年にお亡くなりになったSF作家の眉村卓さん。故人を偲ぶファンの間から「眉村さんを偲ぶ会」の開催が提案されるも、長引くコロナ禍で見込みが立ちませんでした。そこで偲ぶ会に代わって、ファンが協力しあい、企画されたのが記念誌ともいえるこの本です。
個人個人にとって忘れられないことがある時に、それをPODという形で残し、発信する。「忘れないこと」の装置ともいえる、PODの素敵な活用方法のひとつと言えるのではないでしょうか。
研究あり、思い出話あり で資料としての網羅性も高く、愛情のこもった力作であること。「楽しく一気に書き切った」という文章も良く、完成度が高いこと。そして有志による出版プロジェクトという、チームパブリッシングとしての取り組みも高く評価されました。
本書は2009年に東京堂出版から刊行された『アメリカ服飾社会史』の近現代篇で、19世紀から20世紀のアメリカ服飾社会史が290頁にまとめられ、事項と人名に関する豊富な索引で、資料としての価値も高い書籍となっています。
日本の書籍と雑誌の出版は1996年の2兆7千億円をピークにして26年連続で下がり続け、半分以下の市場規模になってしまいました。そんな中で、良書の続編を持ち望む読者と、書き残しておきたい著者を結びつける方法として、デジタル技術を活用したPOD(Print on Demand)は最適な仕組みといえるでしょう。
商業出版では、著者は執筆し、編集者が校閲や図版などを支援し、デザイナが表紙や本文をレイアウトし、出版社が販売促進を行うという分業体制ですが、PODはそれを一人で行わなければなりません。濱田さんは「一人で行えること」を喜んでおられるようで、ご高齢ですが、DTPを学ばれ、すべての作業をご自身で行われたことに感銘を受けました。
この本は、絶版になることがなく、将来にわたって販売され続けることも、喜ばれていると思います。
(イースト株式会社 取締役 会長 下川 和男)
「折り紙」は日本が世界に誇る文化であり、老若男女、古今東西、誰でも楽しむことができる。
この「立体構造を楽しむ バラの折り紙」は初・中級編から上級編、応用編へと難易度別に分けられており、豊富な写真やイラストに沿って指示通りに折っていくだけで、見事な完成品をつくりあげることができる。日本語が読めない海外の読者でも、それは可能なはずだ。Amazonでのレビューも海外勢からの高評価が見受けられる。上級編以降はかなり難易度が高そうだが、逆に挑戦しがいがあり、時間をかけて楽しむことができるのではないだろうか。
デザインやレイアウトも実によく考えられており、余白の使い方もうまく、一頁あたりの情報量も適切である。著者はカルチャーセンターでの講師をされているとのことだが、これをテキストとして使ってもらうことも可能だろう。
「ひとりで楽しめるモノづくり」は今後の社会において需要が高まってくると思われる。自信を持って審査員特別賞に推したい。
(ネクパブ栄誉賞 受賞著者 山本 義徳)
本書は、太平洋戦争中に望郷の念を込めて海に流された一個の椰子の実が、なんと31年後に兵士の出身地である出雲まで流れ着いたという「奇蹟」の実話を扱った絵本である。
しかし本書には、さらなる奇蹟が付いてまわる。著者の亀山さんは2019年に『よこいしょういちさん』という同じく戦争を扱った作品でネクパブPODアワードの最優秀賞を受賞された。授賞式に出席すべく上京し、その折に立ち寄った靖国神社の遊就館でこの奇蹟の椰子の実と出会い本書が誕生したのだそうだ。
さらに奇蹟は続く。今年の本賞選考会は2月25日に行われたが、この日はまさにロシア軍がウクライナに侵攻を開始した翌日であり、選考委員全員が戦争の巨大な影を意識していた。
もちろんこのような奇蹟がなくても、過去の作品を含めた安定してレベルの高い本作り、PODの特性をうまく活かした切り絵表現、地元の学校や図書館への寄贈など、著者のPODを利用した出版活動は素晴らしいものである。こうした行動が、著者と本書に数々の奇蹟を引き寄せたのだと思う。
(株式会社メディアドゥ 取締役副社長 COO 新名 新)
本書は、1960年代を中心に、コンピュータの先駆者達がソフトウェアの権利をどのように守ろうかと苦闘してきた姿を、当時の資料を丁寧に調べ上げ、まとめた1冊となっている。
当初、ソフトウェアを保護する方法としては、著作権以外にも特許、不正競争防止などなど複数の手段が考えられた。最終的に著作権での保護が主流となって行くのだが、そこに至るまでの試行錯誤と考察が詳細に語られていく。
その中で、IBMのシステム/360の成功がもたらした独占禁止法抵触への対応としてソフトウェアがアンバンドリングされ、結果としてパッケージ・ソフトウェアの市場が急速に拡大していく話や、デジタル・コピーへの対抗策としての暗号化や試用期限の付与などがすでに検討されていた事実も興味深かった。
商業出版でも実績のある著者が、自ら「同人誌~オンデマンド出版という方法で、需要や読者ウケなど一切気にせず、世に残すべきものを書いた」という本書。読んでみて、納得の内容だった。次回刊行予定の第二章も、早く読んでみたいと思った。
(株式会社Impress Professional Works 代表取締役社長 土田 米一)
ガザ(パレスチナ)、ルンベク(南スーダン)、マザリシャリフ(アフガニスタン)…。普段あまり詳しく知る機会のない紛争地でも人々の日常は続き、「食」が「生」に直結していることを物語として読ませてくれる本書。
章立てとなっているこれらの街で実際に人道支援活動を行なってきた著者だから語れる、各地のリアルな食文化や風習、歴史、教育、政治が、レバノン人の主人公によるそれぞれの場所でのレストラン創業物語を起点に、複層的に描かれています。
武装組織との交渉や銃撃が頻発する中、客観的で冷静な「私」による第三者視点が読者の謎や当事者意識を呼び、その後のオックスフォード、気仙沼を舞台とした最終章へと進んでいきます。構想5年、筆力を尽くしたと著者も振り返る通りの構成で、ロシアによるウクライナ侵攻という進行形の現実にあっては、日本のみなさんにも感じ取ってほしい内容でした。
昨年エントリーされた1作目にも同様の良さがありましたが、今作はより練られた形で、それがリアル書店での販売や出版記念の動画配信、新聞掲載、作中料理を再現したイベント等へと、活動の幅が広がった点もPOD出版として評価しました。英訳や映画化などの今後の構想も楽しみにしております。
(株式会社インプレスホールディングス 取締役副社長 塚本 由紀)
「子ども達に好奇心の灯をともそう。それが創造性を育む曙光となるに違いない」との思いで、相模原市のボランティアサークル「理科で遊ぼう会」が10数年にわたって実施してきた、子ども向けの理科実験・工作講座や出前授業の内容をまとめたのが本書だ。
ストローと輪ゴムと画用紙でよく飛ぶヘリコプターを作る、木炭で電池を作るなど、16個のほっこり・ワクワク実験が並んでいる。私ごとだが、中学生の時、理科の先生の指導のもと『爪の飛ばない爪切り』などの発明にチャレンジしたのを思い出した(当時はまだ爪の飛ばない爪切りはなかった)。その理科な体験が、後の生業の技術編集や新規事業プランニングにつながったように思う。
このような図を多用した教材を作るのはプロでも難しいのだが、DTPとPODを使い発行にこぎ着けられたのは、教材出版の観点からもすばらしい成果だ。また、市内のすべての小学校や子どもセンターなどに無償で届けることを発行目的の1つに掲げたことで、市内の教育委員会、子ども子育て支援課や公立図書館などの協力を得られ、さらには東京応化科学技術振興財団からの助成も獲得できたとのこと。企画の力とPOD出版のモノとしての力が存分に発揮された作品だと思う。
(株式会社インプレスR&D 取締役会長 井芹 昌信)
写真集という企画はネクパブ・オーサーズプレスでもよくみかけるものですが、本書は睡眠に関する名言とかわいい猫の写真を対にして構成している点がユニークでした。本書で使われているフォントもユニークで、名言はもちろん、猫の写真につけられたコメントも、そのフォントによって格調高く、そして愛らしい印象を文字だけで表現しています。こうした部分はSNSでは十分に表現できないもので、書籍という体裁だからこそ実現したのではないかと感じました。
また、モノクロ中心に構成された猫の寝姿の写真は、見ているだけで癒やされます。活動している猫の写真も見ていて楽しいものですが、猫好きの一人として猫の寝姿も見ていて癒やされるものです。猫好き(とおもわれる)著者の感情が書籍の中で強く生かされているという印象を受けました。
写真を見てかわいい、とおもうだけでなく、名言を読んで楽しいと感じる構成は作品として完成度が高いので、多くの人に手に取っていただきたい一冊です。次回作を期待しています。
(株式会社インプレスR&D 代表取締役社長 兼 NextPublishingセンター長 福浦 一広)
2022年3月23日に行われた、オンライン授賞式の模様をお届けします!
表彰対象は「作品」だけではなく、
作品を生み出し、出版活動をしてきたその「人」自身。
プロ・アマ、年齢、ジャンル問わず、どなたでも出版・応募できます。
どんなジャンルでも、内容も表紙も、
すべてを自分の思うままに作れる、まさに本のDIY。
どこか特別なものだった「出版」が
もっと身近なものになるこの新しい出版方法を体験して、
あなたならではの本を、この機会に世に出してしてみませんか?
あなたが届けたい、残したいことを待っている誰かが、きっといるはずです。
ご応募お待ちしています。
前回はこのような受賞結果となりました!
授賞式の動画も公開しています。
POD(ピーオーディー=プリント・オン・デマンド)は、紙の本を1冊ずつ作ることができる技術です。
多数のご応募、ありがとうございました。
二次審査の通過者には、3月上旬までにメールにてご連絡いたします。
【第1巻】 ZINEEN-ZONE(ジニーン・ゾーン) [玩具漫画] (幸せ貯金編)※自作シール・ソフビ人形・マイクラ風CGを使った世にも奇妙なオムニバス物語
Nissology: A Study of Island Sustainability focusing on the Islands of Okinawa
The Ikigai Diet: The Secret Japanese Diet to Health and Longevity
ネクパブ公式Twitterにて、
応募作品を紹介ツイート中!
2021年 11月1日(月)
2022年 1月13日(木)
「電子書籍のみ」出版の方は対象外となります。
受賞資格は原則としてアカウント所有者であるユーザーに付与されます。
応募条件を満たしていることを確認後、本サイトの応募ボタンより応募してください。
#ネクパブPODアワード
#ネクパブ著者
応募後は、ぜひソーシャルメディアで作品を紹介し本の存在を多くの人に拡めましょう!
Twitterでハッシュタグを付けていただければ、ネクパブもリツイートをお手伝いさせていただきます。
※該当者がいない場合、受賞者なしとなる場合があります。
※応募状況により、賞の内訳が変更となる場合があります。
出版内容、企画、革新性、オンデマンド出版ならではの活用方法、作品に込めたメッセージ、デザイン、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)やネクパブ電子出版などを活用した販売促進の努力・工夫ななどを活用したPRの努力・工夫など、さまざまな観点で審査を行います。出版することで得られた新たな体験、起こった変化、読者の反応など、著者自身の出版体験そのものも評価対象となります。
各賞に選ばれた方は、授賞式への出席のほか、メディア取材、弊社WebサイトやSNSへの掲載をお願いすることがあります。
主催:株式会社インプレスR&D
協賛:株式会社メディアドゥ