※記事中では、インタビュー当時のサービス名(ネクパブ・オーサーズプレス)で表記しております。
本を出版したきっかけ
ブログ読者の声をきっかけに、物語が誕生
2020年6月ごろ、ウェブサービスのnoteに、猫の絵にちょっと元気になれるような言葉を添えて投稿を始めました。誰にあてるでもなく、瓶に手紙を詰めて海に投げるような気持ちで、毎日1枚ずつ続けていたんです。
ある日突然、見知らぬ人から「毎日投稿を続けていてすごいですね」とコメントが入りました。それをきっかけに人とのつながりが生まれていき、どんどんコメント欄がにぎやかになっていったんです。
そして、それまで写真で参加していた「おにぎりアクション」というイベントに、今回はイラストで参加しようとひらめきました。
おにぎりアクションとは・・・
日本の代表的な食である「おにぎり」の画像をSNSに投稿することで、協賛企業の提供により、アフリカ・アジアの子どもたちに給食を届けられる取り組み
https://onigiri-action.com/
猫とおにぎりを一緒に描けば、noteの投稿にもおにぎりアクションへの参加にも使えて一石二鳥!という思いつきもあって、おにぎりを持っている猫の絵を描きはじめました。
すると今度は見てくれている人から「これって、物語にもなりそうですね」という言葉をいただきました。これをきっかけに、まだ自分では物語にするつもりなどないのに、物語の設定になるような絵がどんどん生まれてきたんです。
それからおにぎりアクションの開催期間中、ひと月ほどひたすら絵を描き続けました。そんな中で、これはやっぱり漫画にしなければという気持ちが出てきて、大急ぎで最初のお話を描いて、おにぎりアクションが終わった翌日に公開しました。
この時点では、漫画を描き続けられるとは思っていなかったので、本にするなんて考えてもいなかった、あり得なかったんです。ただひたすら必死で描いていただけでした。でも漫画としてWEBに公開し、多くの方に見てもらう中で、野心のようなものが芽生え、本にしたいなと思うようになりました。
でも具体的に本にする方法を考える前に、noteで読んでくれている方たちに向かって「本にします」と宣言しちゃったんです。みなさんに「わぁ、本ができるんだ!」と喜んでもらえたので、これはマジでやらなきゃと。自分を追い詰めるような形で、本づくりがスタートしました。
ネクパブ・オーサーズプレスを選んだ理由
印刷・発送をお任せし、クリエイティブに集中できる
出版することを決めてから、いろいろとサービスを探しました。ただ、ほとんどの方法は初期費用がかさむので資金面でアウトでした。本の在庫を自分で抱えなければならないのも、メンタル的にちょっと厳しいなと。
一応、自分のネットショップもあるんです。印刷して出来上がったものを自分で検品し、発送して、読者さんに直接お渡しできて嬉しいというメリットもあるのですが、一方でその作業量を考えると、わたしにはハードルが高いと感じました。
そんな中で、Amazonのプリント・オン・デマンドの話を聞き、候補のひとつに入れました。Amazonから発送してもらえるならばクリエイティブな作業に集中できるし、在庫も抱えなくていい。非常に気が楽です。
ネクパブを知ったのは、とある出版関連のメールマガジンがきっかけです。Amazonのプリント・オン・デマンドに関する情報の中で、何年も前から運営されているというネクパブについて触れられていました。信頼できると感じましたし、こちらにお世話になりながら出版するのがやりやすそうだと。自分のペースで紙の本を売りたいという気持ちと、自分にもできそうと思ったことが決め手です。
実際に本を作ってみて
試行錯誤の連続! 手描きの絵をデジタルに変換
ミケパンチさんが出版用の原稿ファイル作成に使用した主なアイテム
・ぺんてる エナージェル 0.5mm、1.0mm(ボールペン)
・GIMP(無料で配布されている画像編集・処理ソフト)
・キングソフトWPS Office「WPS Writer」(文書作成ソフト)
・CubeSoft CubePDF(無償版もある、PDF変換・作成ソフト)
手描きの絵を画像データにした手順は、次のとおりです。WEB連載では、この方法で作った画像を掲載していました。
1. A4コピー用紙を8等分(1コマのサイズ)にカットする
2. ボールペンで絵を描く
3. スキャンし、パソコンに取り込む
4. GIMPを使い、画像上のゴミなどを取り除く
5. コマの外枠、吹き出し、セリフを各レイヤーに分けて追加
6. 調整後、レイヤーをひとつにまとめる
7. PNG形式の画像ファイルとして保存
本の原稿づくりにあたっては、1ページにつき3コマと決め、3コマ分を1つのPNG画像にまとめました。その画像をWPS Writerの白ページに貼り付けてからPDF化しています。もっと良い方法があるのだと思いますが、手元にあるツールと自分で得た情報だけでなんとか試行錯誤した結果、このようなやりかたになったというわけです。
苦労したのは、ページ番号を入れるときです。私の本にはマンガのパートと読み物のパートがあるのですが、読み物パートで縦書きの原稿を作成すると、ページ番号の数字も横に倒れてしまいます。Microsoft Wordなら「縦中横(縦書きの文章の中で横書き文字を縦書き文字の向きで配置すること)」の機能がありますが、「WPS Writer」には、その機能がないんです。
どうしようもなくなって、このあたりで一回心が折れちゃったんですよ。「しばらく原稿を見たくないから一旦放っておこう」という期間もありましたが、本の出版を諦めようとは思いませんでした。本を出すと宣言して、後に引けない状態にしたことがよかったと思います。
そんな中、ネットカフェにMicrosoft Officeが入っているパソコンがあることを知りました。作りかけの原稿ファイルを持ってネットカフェに行き、念願のWordで作業。やっとPDFに変換できたときは、嬉しかったです。
自宅で作ったマンガパートのPDFファイルと、ネットカフェで作った読み物パートのPDFファイルを合体させるためには、定番のAdobe Acrobatを持っていなかったこともあり、CubeSoft CubePDFを使いました。
最後は、ネクパブにPDFファイルをアップロードしてはエラーの出た場所を修正するという作業の繰り返しでしたが、規定どおりに作られていないところは一目でわかるようになっていたので、使いやすかったです。
同時出版した電子書籍版も、作り方の事前知識はゼロでした。でも、ネクパブには、紙の本を出版すれば1クリックで電子書籍用の原稿ファイルに変換できる機能(電子書籍かんたん変換)があったので、簡単にKindleでも出版することができました。
販売価格については、紙の本で多く利益がでるようにすると価格が高くなりすぎてしまうので、電子書籍版に少し多めに乗せさせていただく形でバランスをとりました。
本づくりでこだわった点
目指したのは、児童文学のような雰囲気の本
完成した本を見て、あの自己流でどうにか作ったデータがこんな立派な本に仕上がったのかと、びっくりしました。WEB版と違い、見開きで読むことができるのも、すごく嬉しかったです。
私自身が子どもの頃から児童文学に触れて育ってきたこともあり、児童文学に近い雰囲気の本を目指しました。落ち着いた色合いの表紙や少し大きめのフォントを選んだのも、コマの周辺にしっかりと余白をとったのも、心を騒がせない作品にしたかったからです。寝る前や心を落ち着かせたいときに読んでほしい本です。
あと、おにぎり猫の絵柄は、描き始めたころと今とでは全く違います。特に第1話・第2話は出版のタイミングで全て描き直し、WEB版も差し替えました。最終的には第3話以降も全コマ直しました。せっかく出版するならば、私が思う“理想”に、できるだけ近づけたかったので。
出版後の状況・反響
知らない人から感想が届く。読者が背中を押してくれる
出版後、ネクパブPODアワード2023での受賞をきっかけに、新しい読者の方々からTwitterなどを通じて感想をいただけるようになりました。その中には、私以上に物語を理解し、描いていない思いまで読み取ってくださった言葉もあります。そういった感想から、この先の話を描くためのヒントをたくさんいただきました。またアワードの副賞としてたくさんの方々からのレビューをいただきましたが、そのすべてが私の背中を押してくれています。
正直、なりゆきで始まってなりゆきで描き続けているものなので、1冊目を出した今でも、私の中にはまだ「最後まで描き切れるのかな」との思いがどこかにあるんです。でも、読者の方の声のおかげで、最後まで描こうと、期待に添うようにではなく、自分が出したいものを描こうと、覚悟を決めさせていただくことができました。全部、人のおかげです。
今後の活動予定、出版をしたい人に向けて
ネクパブなら、自分のペースで、自分の作りたいものを形にできる
「おにぎり猫のものがたり」の第2巻も、鋭意制作中です。8月中には出版できるよう、頑張っています。
(補足)『おにぎり猫のものがたり 第二巻』、Amazonで販売開始となりました。判型と編集が異なる「新書版」も同時発売です。本記事の最後でご紹介しています。
あと、「おにぎり猫のものがたり」以外にも、いろいろ出版してみたいです。まだ準備の前段階ですが、ネクパブさんで本を出す楽しさに味をしめました(笑)。
自著は著者優待価格で購入できることも知りましたので、自分で少部数購入して、同人誌即売会イベントに参加することにも興味がわいてきています。
実は私は、過去に商業雑誌や新聞で漫画を連載した経験があります。でもそのときに、媒体や編集者の意向に沿うことができず、自分には商業出版は向いていないと痛感しました。
でも、ネクパブなら、自分の世界観を大切にしながら、自分のペースで、自分のつくりたいものを形にすることができます。本にするだけならタダでできます。たとえばネットで自分の作品を発信し続けている方も、どんどん本をつくってみるといいと思います。本をつくる楽しさ、届ける楽しさを、ぜひ多くの方に知っていただきたいです。
もちろん、SNSなどを活用して、つくった本の存在をPRすることも大切です。私にとってホームページは本拠地、noteは告知場所。Twitterは、フォロワーさんとの距離感が近いため、日常会話におにぎり猫のイラストを添えて、ほっこりとした空気感をお届けするイメージで投稿しています。Instagramは、画像メインのSNSなので、イラストから興味を持ってもらえるよう、試行錯誤中です。Facebookと同時投稿できる仕組みを使っています。
今回出版した『おにぎり猫のものがたり 第一巻』は、「できるならばこの世の中がやさしくてあたたかい世界であってほしい」と望んでいる方に届いてほしい本です。そんな本の空気感が伝わればと願いながら日々発信しています。
2023年5月24日 オンラインにて取材
プロフィール
櫻井 智子(ミケパンチ)さん
主にペンや鉛筆を使用し、猫などのイラストや漫画を描く。過去に商業雑誌や新聞での連載経験あり。尊敬する作家は、チャールズ・シュルツ氏。Twitter(@mikepunch358)やホームページにて随時情報を発信中。
櫻井さんが出版した本(2023年9月現在)
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パブファンセルフユーザーさんによる出版体験談、いかがでしたでしょうか? ご参考になれば幸いです。パブファンセルフは、会員登録やサービス利用料はもちろん、基本的に出版費用は無料です。読者からの注文のたびにアマゾンで1冊ずつ印刷・製本・発送されるPOD出版(プリント・オン・デマンド)なので、在庫も初期費用も必要ありません。
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試行錯誤して作りました。
リピーター獲得の秘訣は、
情報発信×読者の声×改訂版。
初めて買ったパソコンでパンのレシピを個人出版。
オオサンショウウオの住みやすい社会を作る
僕たちはそんなことを本気で考えています
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共通の利点は、内容をアップデートしやすいこと。
究極の犬マニア向けの本ができました。
初めてだったけど、なんとか完成しました。
秘訣は作る前から読者を巻き込むこと。
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社会とつながることを諦めたくない。